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インタビューinterview

阿蘇ならではの地元食材を楽しめる親和苑として、創業以来の伝統を守りつつ、時流に乗った変革を進める

内牧温泉旅館 親和苑 館主

松岡 陽仁

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親和苑様は阿蘇内牧にある100%天然温泉の静かな旅館です。自慢の料理は丹念に育てられた自家製栽培の野菜や旬の素材をふんだんに使っておられます。伝統ある旅館として、また「阿蘇の食」の提供者として、顧客満足を追求する館主。様々な切り口から考えをお聞きする事が出来ました。

株式会社アイキャッチ(以下ア)
松岡様(以下松)

お客様に阿蘇の「食」を楽しんで頂くために、自家栽培の食材にも力を入れています

早速ではありますが、親和苑様のお客様に対してのサービスについてお伺いさせていただきます。
当旅館では、現在離れを増やしており、お陰様で2016年7月には「紬(つむぎ)」をオープンさせることができました。その一方で本館でのサービス内容の調整も行っています。それは、ご宿泊される方に対して、働き手とサービスの質のバランスを取りづらい時代になってきているからなんです。部屋数だけでなく、温泉の方もある程度の規模にして、離れのサービスが確立したら今いる人数で今より高い品質で提供できるように経営していこうと考えています。
そうすることでお客様にどのようなことを与えられるとお考えですか?
部屋数を少なくして一日あたりの受け入れ客数が減ることにはなりますが、その分今まで以上のおもてなしで、お客様お一人お一人の満足向上につなげ、お客様に感動していただけるお宿を創って行きたいと思っています。当旅館はこれまで、阿蘇地域の地のものを食べて頂く料理旅館として経営してきました。一昔前と違い、今ではおいしいものを簡単に知ることができ、それを食べるために足を運ぶ事が容易にできるようになりました。だからこそ、遠方からお越しのお客様に対して期待を裏切らないよう「阿蘇の地のものを食べる事ができる」親和苑として信用を得られるよう、これからもやっていきたいのです。この考え方では、もしかしたら何度もご利用頂いているお客様には、これ以上新しい感動を感じにくいかも知れませんが、信用に対して約束したものを提供する、ここに来たら期待していた阿蘇の料理が食べられる。そう自負したいと考えています。それがお客様の満足に繋がればと思っています。
個々のお客様に対して、満足頂けるお料理を提供し続けることも難しくなりませんか?
そうですね。万人に受け入れられる料理というのは難しいと思っています。しかし、逆に素朴な料理だからこそ食材の味を最大限引き出すために料理人の腕が試されていると考えます。最大限の努力をしないで諦めるということはしたくないですね。うちは「継続は力なり」でやっていますから昔からの伝統とかやり方をこれからもしっかり続けていく事が一番大事ということも考えています。例えば、当旅館の高菜は自家栽培のもので、手塩にかけて育て、高菜折(※手で折って収穫すること)までしています。当旅館では当然と思ってやっていますが、そういった部分をお客様が見てくださっているのではないでしょうか。だからここだったら間違いないと、数多い旅館の中からうちを選んで遠方から来て下さると思っています。手を抜いてしまった時にうちは普通の旅館に変わるんだろうと思うんですよ。他にもお茶、梅、野菜、といったものは自家栽培しています。可能な限り自分たちで作ったものを提供するようにしています。阿蘇の昔ながらのお茶が飲め、それに添える漬物にしてもこれが家庭の手作りの味だというものを食べていただけるようにしています。創業以来大事に守り続けている事が信頼に繋がります。これ以上大きくもしないですし、大事に守り続ける過程として考えて精一杯やっています。

内牧に起こる環境の変化に柔軟に対応しつつ、地域全体が効率的に動けるよう取り組みたい

松岡社長の考え方では、すでに親和苑のクオリティっていうのはこういうものだという軸があって、お客様から感動してもらえるようにベストな状態を作っているということなんですね。
私も親和苑に帰ってきて、10年以上経つわけですが、数多くの感動も提供してきたし、感謝もされてきたと思っています。でも最終的には「品質の約束」になるんです。先程述べたように実際、何回も来て下さるとその度に新しい感動を提供することができにくい。でも、最後は品質の期待に応えることが大切なのだと思っていますよ。たとえ他の宿にご宿泊されたとしても、うちにまた戻って来ていただけるような信頼はできていると確信しております。
品質の期待に応え続けるにしても、やはり周りの環境が変わっていくにつれて同じ事を提供し続けられないと思うのですが、どのように乗り越えていらっしゃいますか?
もちろん、そのときに応じて変えていくことはしています。けれども、いきなり大きく変えることはありません。必ず次の変化の芽を残すよう、余裕を持ちながら変えていくように心掛けています。
最後になりますが、熊本地震後厳しい状況が続いていますが、これからの内牧にはどのような事が必要だと考えていますか?
内牧は飲食店の数が少ないという事もあり、新しくお店を開く人を応援したいと思ってるんですよね。一方今、宿で料理の提供をやめていきたいという旅館が増えてきており、一般的にいう泊食分離という考えですね。そういう旅館と提携して、仕出しとか、「食事はお店の方へ足を運んでください」とか、街を回遊するルートを作っていけば、十分飲食店が活躍する場があると感じています。そういう仕組みを紹介したり、内牧全体が効率的に動いていけるような取り組みをしていきたいですね。

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