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インタビューinterview

伝統は求められ続けて初めて歴史をつくることができる。慣習に固着せず革新を続けることで、守るべきものを守ることができると考える。

阿蘇内牧温泉 蘇山郷 館主

永田 祐介

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雄大な外輪山に囲まれた内牧。蘇山郷様は、湯の町の風情が漂う昔ながらの宿です。永田様は館主としてだけではなく、阿蘇という観光地全体の視点に立ち、様々な取り組み・連携を図られています。その具体的内容について、様々なお話を聞かせていただきました。

株式会社アイキャッチ(以下ア)
永田様(以下永)

地震被害からの復興には、いち旅館や地域だけではなく、もっと大きな計画を描く必要がありました

熊本地震後にいち早く営業を再開されたと思いますが、どのような苦労がありましたか?
熊本地震により、建物が破損し、温泉を引くパイプにひびが入り、温泉を引き上げることができなくなりました。それにより長期休業を余儀なくされましたが、皆様の温かいご支援をいただき、震災から3ヶ月後には開業することができました。地震被害からの復興を考えるときには、いち旅館や地域ではなく、更に大きな計画を描く必要がありました。現在も阿蘇へのアクセスは決して良いものではありませんが、阿蘇へ来ていただけるお客様の不便を解消していくためにも、県・地域団体と皆で連携して行う必要があると思います。

これからは観光地が個で活動していく時代ではなくなっていく

今後の阿蘇地域の観光をどう展開していこうとお考えですか?
そうですね。どこの観光地もそうかもしれませんが、そもそも観光地が個で活動していく時代ではなくなってきています。そこで、阿蘇では阿蘇サイクルツーリズムを中心としたDMO※1(着地型観光のプラットホーム組織)を組成していき、その中心にDMC※2(着地型観光のプラットホーム法人)であるASOランドオペレーションが位置づけられるように動いていきたいですね。例えば、熊本県でも公的機関と民間の金融機関が新たなDMCを設立して海外のメーカーと連携する動きなんかもあるんですけど、そのDMCと阿蘇のDMCとのつながりを作っていこうと思っています。
サイクルツーリズムについて熱心に取り組まれているという印象を受けるのですが、よろしければ、サイクルツーリズムの方向性をお聞かせ下さい。
前提として、現在盛んに観光地経営の視点に立った観光地域づくりの舵取り役を担うためのDMOやDMCを設立していこうという動きが全国でもありますが、軌道に乗せるためには、基本の核となるものがあってこそ初めて順調にいくと考えています。阿蘇でいえばそれがサイクルツーリズムです。例えば瀬戸内地域が現在一番広域で取り組んでいますが、広域でやれているのは、始めと終わりにしまなみ海道というのがあって、自転車というツールで括っているから成り立っています。自転車という核になるツールが存在しているんです。阿蘇地域でもサイクルツーリングというものを中心としてやった方がいいんじゃないのか?と考えたわけです。例えば海外の自転車メーカーとタッグを組んで一緒にやるという旗頭をまずあてます。そのメーカーのショップを誘致する交渉を我々がメインとなり働きかけ、そこから九州中に、そのショップを一県に一店舗づつ展開できるようになれば、ユーザーが阿蘇に来たら必ずそのメーカーのショップに寄って頂いて、ここが中心となってサイクルツーリストをやってるというムーブメントを創り出していけるのではないだろうか。もしくは昔話題になった瀬戸内と阿蘇までをサイクルツーリズムを使ってつなぐ構想など現実味を帯びてくる。ツールド阿蘇の事務局を開局して活動することがスタートですが、やはりなにかしらの核を据えなければ、結果はついてこないと考えています。

阿蘇のショップが中心となって、サイクルツーリストのムーブメントを創り出していけるようにしていきたい

「阿蘇サイクルツーリズム」発足後、重要になってくることは何ですか?
阿蘇については、思い切ってサイクルツーリズムを中心に、そこから様々な方向へ派生させていくことが重要になってくると思います。その上でインバウンドにいくのか、交通整備にいくのか、そういう話を全部ひっくるめて議論していかないといけないと思います。私たちは今からDMCを立ち上げましょうという話をしているのではないです。すでに阿蘇ランドオペレーションというDMCを立ち上げていますが、自分たちで阿蘇の観光や、交通、アクティビティの整備など、サイクルツーリズムを中心に取り組んでいきたいと考えています。これから、阿蘇という観光地がエリアとしてアクティビティに取り組み、結果、滞在時間が長くなる方向に繋がらなければ、阿蘇を本当の観光地に出来ないと考えていますし、阿蘇という観光地としてのエリアが確立した時に、他県の、福岡・大分を結ぶ観光エリアとしての見え方が、行ってみたいと思われる九州観光の形になるのではと思っています。
※1
Destination Marketing/Management Organizationの略で、地域全体の観光マネジメントを一本化する、着地型観光のプラットフォーム組織。
※2
Destination Management Companyの略。着地型観光のプラットフォーム法人。
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