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インタビューinterview

畳を通じて、お客様との接点のひとつひとつを大切にしながら、接触の機会を多くとることでお客様の安心感にもつなげていきたい。

たたみ工房福島 3代目店主

福島 潤一郎

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創業昭和7年、今年で85周年。親子3代にわたり地元、熊本県御船町で畳・襖・障子の製造・販売を行っている。「風がスッと抜ける」ような本当に良い畳 は、素材を見極める「目利き」と、畳を作る「技術」。創業以来、数十万の畳を作り続けた職人集団の店主にお話しを伺いました。

株式会社アイキャッチ(以下ア)
福島様(以下福)

85年前から自社製造自社販売のスタイルは変わっていません。

まずは畳業界の事をお話しいただけますか?
業界としてはかなり縮小の傾向の業種で間違いないですね。私が2代目である父からこの会社を継いだのが27、8年前。当時日本全国に4,000万畳あると言われていた市場規模が現在は1,200万畳。約4分の1まで縮小しています。
1年で約100万畳ずつ減っているということですね。
そうです。またイ草農家も県内で6,000件あったのですが今では500件程度まで減っていますし、機械メーカーの撤退も予想されています。今一番怖いのはそういったインフラがなくなることかな。市場規模の話をすると、畳がたくさんあるようなお家、12~24、36畳あるようなお家が少なくなったのと、賃貸になるアパート・マンション関係が完璧にフローリングに切り替わりましたからね。賃貸関係の市場規模が縮小したのが一番大きいと思います。その流れは現在も変わらず、家族経営・親子だけで商いをされていた畳屋さん達は廃業に追い込まれて行っているのが現状ですね。
福島社長の会社様は従業員も雇用されて現在も順調にお仕事をされていますよね。どういったご商売のやり方をされているんですか?
基本的にはそういった畳屋さん達と一緒ですよ。85年前から自社製造自社販売のスタイルは変わっていません。多角化すれば企業規模を大きくできるかもしれないんですが自分の所でつくって売ってというスタンスは変えていません。お取引先様は法人の方と一般消費者の方の割合は5:5。今のところ一般消費者様の割合は広告等での効果もあり増えつつあります。
いわゆるBtoCのお取引ですね。
そうです。特に気を付けているのは一般消費者様との接触には平等に考えることを強く意識します。枚数が多いからとか金額が高いものだからという理由でお客様を区別しないように心掛けています。
そのお考えも経営理念である「人になれ、奉仕せよ。-お客様のために、地域社会の為に-」からきているんですね。
そうですね。理念を作ったのは平成14年。その約3年ぐらい前からこの会社の存在する意味や目的なんかをくり返しくり返し自問自答していました。やっとたどりついたのがこの言葉でしたね。単なる思いつきなどではなく私自身の中から生まれたものでした。今でも社員全員で年始のミーティングでは理念について語った文章を社員全員で読みあわせて、その頃の気持ちを忘れないようにしています。
それ以外でみなさんの共通認識を作るための取組はどのようなことがありますか?
もちろん数値に関してもしっかり目標設定しますよ。弊社は6月が決算なのでその末日までに来期の計画は毎年立てるようにしています。

新しい集客の手段として工場併設の来店型店舗の確立を

感性の部分と理性の部分のバランスがしっかりされてらっしゃるんですね。話は変わるんですが御社の当面の課題と思っていることはなんですか?
最近考えることは業界の規模縮小を防ぐために、地域にある畳屋さんの廃業をとめれないかと思ってます。お仕事をうける窓口は続けてもらって私達が代行をする。どんな田舎にある場所でも私達が伺って施工させて頂く。そんなメーカーみたいな動きができないかなと考えています。この工場で作ったものが流通して世の中に出ていくことで自社も業界も生き残りにつながると考えています。また本来は、広告などを見て頂き、お電話を頂いてからお客様との接触がスタートなのですが、新しい集客の手段として工場併設の来店型店舗の確立を2~3年以内にできるようにしたいと思います。現在建設中(H28.11時点)の新工場の中にはお客様の本音に対応するために、わかりづらい畳の事を実際に「見て、触って、選べる」ことができるギャラリーを建設中です。お客様は比較検討したいものです。今までの畳屋さんは電話で呼んでしまったら、絶対そこで畳を頼まなければならないのでは、という感情がお客様にはあったと思います。そういった機会損失を防ぐためにもできるだけお客様との接点を増やすように小売りの要素を取り入れ、工場が見学できたりコーヒーなども提供して滞在時間を長くとって頂けるようにしたいです。またその場で決められなくてもサンプルを持ち帰って頂き、接触の機会を増やせるようにしていきたいですね。畳屋さんだけど「入りやすくて出やすいお店」が目指している姿ですかね。
いままでのやり方を維持しながら、あたらしくお客様が買いやすい環境を作るのが今後のビジョンなんですね。
そうですね。お客様との接点のひとつひとつを大切にしながら、接触の機会を多くとることでお客様の安心感にもつながってくれればありがたいですね。また85年やってきていることに慢心せず、お仕事に取り組んでいきたいです。
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